アレルギー性鼻炎

◆アレルギー性鼻炎ってどんな病気?
アレルギー性鼻炎とは、その名の通りアレルギー反応によって引き起こされる鼻炎のことです。
風邪を引いているわけでもないのに「くしゃみ」「鼻水」「鼻づまり」があらわれ、とくに朝夕に発作症状が現れます。

でも、どうして朝夕に発作が起こるのでしょう?
それは、アレルギー性鼻炎発症のメカニズムが自律神経のバランスと深く関わっていることに原因があります。
自律神経には交感神経と副交感神経があり、両者がバランスよく働くことで、私は健康を維持しています。交感神経は昼間に活動しているとき、副交感神経は体を休める夜から朝にかけて活発に働きます。そして、この副交感神経の働きが優位になるとアレルギー性鼻炎の症状が起こりやすくなるため、朝夕に発作が起こりやすくなるのです。

◆アレルギー性鼻炎と風邪の見分け方
アレルギー性鼻炎は風邪の初期症状とよく似ていますので、アレルギー性鼻炎なのか風邪を引いているのかの判断はなかなか難しいところです。
風邪だと思って診察を受けたら、実はアレルギー性鼻炎だったというケースも非常によくみられます。

風邪の場合は1週間から長くても10日ほどで症状が治まりますが、アレルギー性鼻炎の場合は、抗原がある間中、症状は出続けます。
また、風邪の場合は、のどの痛みや発熱、せき、倦怠(けんたい)感などの症状も現れますが、アレルギー性鼻炎は症状に大きな変化が起きることはあまりありません。

もっと簡単な見分け方としては、鼻水の色で見分けるという方法もあります。
風邪の鼻水は粘着性があって、白く濁っていたり黄色や緑色のどろっとした状態になりますが、アレルギー性鼻炎の鼻水は透明でさらさらしているのが特徴なのです。

◆アレルギー性鼻炎と間違えやすい病気
風邪の他にもアレルギー性鼻炎と間違えやすい病気があります。

例えば、鼻の穴の粘膜に慢性的に炎症があることによって起こる「慢性鼻炎」。
これも症状としては鼻水や鼻づまりなどですが、急性鼻炎を頻繁にわずらったり、それが長引いてしまったことで慢性鼻炎になってしまうケースが多く見受けられます。

また、急激な温度差が原因で起こる鼻炎もあります。
これは「血管運動性鼻炎」といい、自律神経が乱れているために鼻の粘膜が過敏な反応を起こしてしまうもので、発作的なくしゃみや鼻水、鼻づまりなど、アレルギー性鼻炎と同じ症状の起こり方をみせます。

「花粉症もアレルギー性鼻炎ですか?」という質問をよく受けますが、その通りです。
花粉症はスギやヒノキなどの花粉を吸い込んでアレルギーを起こす病気で、花粉が舞う季節だけ症状が出るため「季節性アレルギー性鼻炎」とも呼ばれています。ただ、普通のアレルギー性鼻炎の症状と多少異なるのは、「くしゃみ」「鼻水」「鼻づまり」の症状に加え、目のかゆみや充血が起こるのが特徴。
また、のどがイガイガしたり、皮膚に付着して肌荒れを起こしたり、花粉を吸い込むことで消化不良や食欲不振などの症状を引き起こすこともあります。

◆アレルギー性鼻炎の診断と治療
通常の診断方法としてはまず、鼻の粘膜の状態を診ることからはじめます。
アレルギー性鼻炎の人の鼻の粘膜は蒼白で、鼻水がその粘膜のまわりを覆っていたり、粘膜自体が腫れたように膨らんでいます。ちなみに健康な人の粘膜は薄いピンク色、急性鼻炎の人は赤くなっています。
粘膜の状態を確認した後、さらに詳しい検査を行って原因を調べていきます。

原因が明らかになると、病院や診療所では通常、症状を改善するために投薬による治療を行い、それと同時に生活上のアドバイスが行われます。

投薬治療に用いられるものとしては、まず「抗アレルギー剤」があります。
アレルギー反応の原因とされるヒスタミンなどの化学伝達物質の生成や、生成後に生じる働きを抑えて症状を防ぐ働きがあり、飲み薬と点鼻薬があります。ただ、実際に効果が現れるまでには、個人差もありますが、大体2週間ぐらいはかかってしまいます。

また、アレルギー症状の治療に用いられる代表的なものとして「ステロイド薬」があります。
粘膜の炎症をすぐに抑えたり、抗体が作られるのを抑えることが出来たりと、多岐に渡って非常に効果的な薬ですが、ステロイド薬を使用することでアレルギー自体を治すことは残念ながらできません。しかも、ステロイド薬は効果が強い一方、長期的に使用したり、大量に使用すると、重い副作用に悩まされる危険性も懸念されています。
その為、ステロイド薬の使用は、一時的に症状の改善を期待する場合やステロイド薬を使わないと改善することが出来ない重度の患者に対して使用されることが多く、注意が必要です。

他にも、ヒスタミンの働きを抑えることで症状を取り除く「抗ヒスタミン薬」、鼻粘膜の血管を収縮させて鼻づまりを解消させる「抗血管収縮性点鼻薬」などがあります。

これらの投薬で症状の改善がみられない場合は「減感作(げんかんさ)療法」が行われます。
これは、アレルギーの元となる抗原の抽出液を皮下注射する治療法で、低濃度・少量から始めて、徐々に濃度と量を増やしていく治療法です。

◆市販のお薬ってどうなの?
「アレルギー性鼻炎かな?」と思った場合は、まずは病院で検査をして原因を明らかにし、症状に合った治療を受けることが大切ですが、学校や仕事がなかなか休めない場合もありますよね。そんなときは市販薬を上手に利用するのもよいでしょう。

市販のアレルギー性鼻炎用の薬は一般的に、病院で医師が処方する薬より効きめがおだやかで、症状全般に効くよう成分が配合されていますので、軽い場合や、一時的に症状を抑えたい場合は有用であるといえます。 ただし、アレルギー性鼻炎と風邪の症状は似ていますが、発症のメカニズムは全く違いますから、薬を選ぶときには素人判断をせず、薬剤師さんに相談することをおすすめします。

◆アレルギー性鼻炎の原因は?
アレルギー性鼻炎は、生まれつき抗体を作りやすい体質、いわゆる「アレルギー体質」であることが大きな要因の一つに挙げられますが、アレルギー体質だからといって、必ずしも発症するというわけではありません。
一度発症してしまうと完治するのが難しい場合も多いのですが、アレルギー体質は遺伝的な要素も多いので、ある程度予測し、生活改善などで予防を心がけるようにすると良いでしょう。

その為にも、アレルギーを引き起こす原因となる物質「抗原」を知ることは重要です。

アレルギー性鼻炎を引き起こす抗原の約60パーセントが、室内のゴミやダニ、ペット類の毛などの「ハウスダスト」だといわれています。
つまり、このハウスダストを防ぐことが、アレルギー性鼻炎の予防には非常に効果的なのです。

そのためにはまず、室内を清潔にすること。
小まめに掃除をして、アレルギーの原因となるハウスダストがたまらないように暮しましょう。床はじゅうたんよりフローリングが理想的。部屋の中にはなるべく小物は置かずにスッキリさせることでホコリが溜まるのを防ぎます。
また、たばこの煙も鼻の粘膜を刺激して症状を悪化させる原因になりますので、お子様がアレルギー性鼻炎で悩んでいる時はとくに注意が必要です。

次に多い抗原として挙げられるのは花粉、いわゆる「花粉症」です。アレルギー性鼻炎患者の約30パーセントがこれにあたります。
そして、残りの10パーセントが、カビや食事などによるものです。

◆アレルギー性鼻炎の改善方法
冬場にアレルギー性鼻炎の症状が強く出ることがありますが、これは暖房などで密閉されることで、室内にハウスダストが飛び回っている状態になるのが大きな原因。しかも、それに加えて、乾燥した空気も症状を悪化させる要因になっています。
鼻の粘膜には適度な湿り気が必要ですから、加湿器の利用するなどの対策もおすすめです。もちろん加湿器の定期的な掃除も忘れずに。

また、アレルギーの改善には「適度な運動をすること」が有効だと言われています。
適度な運動をすることによって自律神経の働きを活発にします。自律神経を正常な状態にすることで、アレルギーの予防や抑制につながるのです。ちなみに、乾布摩擦や冷暖房に頼らない生活が勧められるのも、同様の理由によるものです。
ただし、水泳に限っては鼻の粘膜の過敏性を高め、症状が悪化してしまうこともあるので注意が必要です。

◆アレルギー性鼻炎と食事の関係

ここ十数年の間に、アレルギー性鼻炎やアトピー性皮膚炎の患者さんが急増しましたが、その背景には食事が大きくかかわっています。

日本人の食生活はもともと穀物や野菜が中心でした。動物性タンパク質は、焼き魚や煮魚などで補給していたのが一般的です。
ところが、食生活の欧米化により、肉類や卵、乳製品などを過度に食べるようになり、かわりに野菜の摂取が極端に減っています。 こういった、タンパク質や脂肪の摂り過ぎ、栄養の偏りがアレルギーを起こしやすくしているのです。

ですから、ビタミンやミネラルをたっぷり含む野菜類を料理に取り入れるように心がけ、栄養的にバランスのよい食事を摂る習慣をつけることが何よりも大切です。
もちろん、食品添加物を含む食品にも注意が必要です。インスタント食品や加工食品の利用は最低限にとどめるようにしましょう。
また、子供のうちから食事に注意を払っておくことで、眠っているアレルギー体質を起こさずに済む可能性も高まるのです。

◆アレルギー性鼻炎のメカニズム

抗原が鼻の粘膜に付着すると、粘膜にある「肥満細胞」などから「ヒスタミン」と「ロイコトリエン」などの化学伝達物質が放出されます。
そしてこのヒスタミンが鼻の粘膜にある「知覚神経」を刺激すると、「くしゃみ中枢」に達し、呼吸器筋に働いて、くしゃみが起こるのです。

交感神経が優位だと、ヒスタミンなどの化学伝達物質の放出を押さえるノルアドレナリンが分泌されますが、逆に副交感神経が優位だと、ヒスタミンの分泌を促進するアセチルコリンが多く分泌されてしまいます。
つまりアレルギー性鼻炎の患者さんはこの副交感神経が活発だということなのです。

また、放出されたヒスタミンは知覚神経を刺激すると同時に「分泌中枢」も刺激して、分泌腺に働きかけるので、大量の鼻水が出て止まらなくなります。
さらにヒスタミンは鼻の粘膜にある血管にも直接作用して、血管の拡張や循環障害を引き起こします。その結果、鼻の粘膜が腫れ、鼻づまりが起こるのです。

また、肥満細胞からヒスタミンと一緒に放出される化学伝達物質「ロイコトリエン」は直接、分泌腺や血管を刺激して鼻水を分泌させたり、粘膜のむくみによる鼻づまりを引き起こしてしまいます。ヒスタミンに比べると力は弱いのですが、持続性があるので、一度発症すると長引く原因になってしまうのです。

◆アレルギーマーチ

個人差はありますが、通常、乳児期にアトピー性皮膚炎が現れ、それが2~3歳になると徐々に軽減し、代わりに気管支ぜんそくが起こり、その後、小学生頃になるとアレルギー性鼻炎が発症するケースがよくみられます。
アレルギーの症状がまるで行進でもしているかのように現れるこういう症状は「アレルギーマーチ」と呼ばれています。
ただし、幼児期にアトピー性皮膚炎が発症したからといって、必ずアレルギーマーチが起こるということではありません。

アトピー性皮膚炎や気管支喘息などの症状は、成長とともに自然に症状が軽くなっていく(自然寛解)ことがあり、まるで完治したような状態になることがありますが、残念ながら、アレルギー性鼻炎はアトピー疾患のなかでも自然寛解する可能性がもっとも低く、いつまでも症状が残るケースが多いようです。
また、アトピー性皮膚炎や気管支喘息の症状にしても、アトピー体質は変わったわけではありませんので、二度と症状があらわれないという保証はありませんし、近年では大人になってから発症するというケースもしばしば見受けられます。

ただし、いずれの場合も適切な治療と日常生活のケアによって症状の改善は可能です。

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