便秘

便秘とは

便秘について

便秘とは、“本来排出すべき便を、十分かつ快適に排出できない状態”を指すと定義されています。曖昧にきこえるかもしれませんが、排便の量や回数には人それぞれ個人差があるため、1週間に排便が3回未満であるから便秘というものでもありません。12回以上の人もいれば、以前から34日に1回で快適な排便があれば、その頻度が、その人の排便のペースで良いと思われます。平均的な目安としては、1週間に排便が2回未満である場合、もしくは以前より排便の回数が減少した・毎日あっても排便後のすっきり感が得られない、便が硬くてなかなか排便できない状態のときは便秘であるといえます。

便秘の受診のタイミング

救急外来を受診

  • 激しい腹痛がある便秘
  • 嘔吐を伴う便秘
  • 冷汗、膨満感を強くなっている便秘
  • お腹の特定の部位を押すと痛みが強くなる便秘

翌日以降、消化器内科へ

次のような症状がある場合

  • 便が硬い、便の手前の部分だけが硬い
  • コロコロした便が出る
  • 排便に時間がかかる
  • 強くいきまないと便が出ない
  • 排便してもすっきりしない
  • 便に血が混じっている
  • 黒っぽい便が出る
  • お腹の張りがある、苦しいことがある
  • 便秘薬が効かない
  • 下剤を飲まないと便が出ない
  • 下剤の量を増やさないと出なくなってきた
  • 3日以上、以前より排便がないことがよくある
  • 便が細くなってきた、少量しか出なくなってきた

便秘の原因

  • 生活習慣に由来する便秘

病的なものではないものの、生活習慣が原因となって便秘を起こすこともあります。
特に、以下の項目に該当する場合には、便秘になりやすいといわれています。

  • 排便する時間帯が不規則
  • 無理なダイエット
  • 咀嚼回数が少ない
  • 肥満傾向がある
  • 運動不足
  • 食物繊維の摂取量が少ない
  • 不眠の傾向がある
  • 朝食を食べない
  • ストレスを抱えがち

ほかにも、甲状腺機能低下症、糖尿病やパーキンソン病といったの病気が便秘の原因となる場合や、血圧やアレルギーなどお薬の副作用で便秘になる場合もあります。

便秘の種類

便秘の種類は、腸の機能的な問題で起こる「機能性便秘」、他に原因となる病気によって便秘という症状が起こる続発性便秘に分けられます。

機能性便秘-大腸の働きが原因

直腸性便秘(結腸通過時間正常型)

トイレの時間を確保できない‘‘便意を我慢しすぎる‘ などの生活リズムが習慣化され   直腸に便が達しても便意を感じにくくなり、大腸内、直腸近くに長く便が留まるタイプです。

痙攣性便秘(結腸通過時間遅延型)

ストレス、過度の緊張などで、自律神経のバランスが崩れ、蠕動運動が強くなり腸が痙攣を起こしてしまい、便が便が直腸までスムーズに移動せず、排便までに時間がかかるタイプです。

弛緩性便秘(便排出障害型)

加齢、運動不足、食物繊維の摂取不足などが大腸の蠕動運動(内容物を先へと送り出す機能)が低下することで、大腸内の便の通過に時間がかかり、大腸内に便が長時間留まるタイプです。

続発性便秘-他の病気が原因

器質性の便秘

大腸がんによる直腸の閉塞、手術後の癒着などによって、排便がうまくできず、便秘が起こっています。 非常に危険な状態であり、早急な治療が求められます。

肛門・直腸疾患

肛門や直腸の疾患は、便秘を引き起こすことが多くなります。 もっともよく見られるのが切れ痔です。慢性的な切れ痔によって肛門が狭窄し、排便がスムーズにできず、強い痛みを伴い、便秘になります。早期であれば、軟膏や内服薬を使った薬物療法での治療も可能です。

その他

パーキンソン病、糖尿病、などの全身疾患に伴う便秘、降圧剤、アレルギー薬など服用中の薬の副作用によって起こる便秘などもあります。

便秘が原因となる消化器疾患

大腸がん

現代の日本人の食事は脂肪分が多く欧米化、食物繊維の摂取不足、遺伝子の変性(原因不明)などにより年々増加傾向にある病気です。 
初期には無症状ですが、進行がんの状態になると便が細くなる、さらに進むと 排便が便秘になったり、血便、腸閉塞を引き起こします。
便自体が細くなったり、血便になったりする場合は、早急に受診しましょう。

過敏性腸症候群(Irritable bowel syndrome :IBS)

前述の便秘の種類「痙攣性便秘」にあたります。大腸や小腸に明らかな器質的な病気(潰瘍や腫瘍など)が無くても、便秘や下痢をくり返す病気です。
腹痛や腹部の膨満感などもみられることがあります。身体的、精神的ストレスを介した自律神経が原因と考えられており、一時的によくなっても再発することがあります。

腸閉塞(イレウス)

腸の捻じれや腫瘍、腸の機能低下などによって便が貯まり、内容物が運ばれなくなる病気です。
慢性便秘症の方や腹部手術をしたことのある方、高齢者に多くみられ、腸内に便やガスが溜まり、便秘のほか、お腹の張り、激しい腹痛、嘔吐などが起こり、救急対応が必要となります。

便秘の診断方法、検査

1,問診

便の状態、回数、生活習慣、病歴や服用している薬、腹痛などの症状の有無をお尋ねします。

2,触診・聴診

腹部の状態 堅さ、張り具合、痛みの場所の有無などを診ます。

3,腹部レントゲン

腸の中にどの程度の便が溜まっているかを確認、腸管内ガスの状況や腸閉塞などが起こっていないかを確認します。

4,血液検査

必要と判断された場合、糖尿病や甲状腺機能低下症が疑われる場合には、血液検査も実施します。

5,大腸カメラ

内視鏡で大腸粘膜の状態を直接観察できます。大腸がんや炎症やポリープによる狭窄なども発見でき、組織採取が可能なので確定診断もできます。

薬物療法による経過観察

内服薬で症状が改善するかを経過観察、適切であるか判断します。便秘の種類、状態に応じて 下剤を適切に使い分け便を柔らかくする便軟化剤、腸の蠕動を刺激する腸刺激性下剤、小腸から便の水分量の増加を促し、たりするお薬、 緩下剤による腸内の水分量の維持、浸潤性下剤による便の水分量の増加を促したり、また、刺激性の少ない下剤を用いて腸の働きを活性化させスムーズな排便を促したり、浸透圧性下剤などで様子を伺いながら調整していきます。

いつもよくある便秘?

便秘は、身近な症状であるために、気づいても受診される方はそう多くありません。
ただ、便秘が続くと、腸や肛門に負担をかけることとなり、病気の原因をつくることがあります。反対に、病気を原因として便秘が生じている、という可能性も十分に考えられます。
慢性の便秘はまた、QOLの低下にもつながります。高齢になってからの排便時のいきみによって起こり得るトイレで心筋梗塞、脳卒中などがよく知られています。
また、便秘を伴う病気 特に注意が必要なのが、大腸がんです。
大腸がんになると必ず便秘の症状が現れるというわけではありませんが、便秘をきっかけとして検査を受けた場合には、比較的早い段階での発見が可能です。

便秘は消化器専門外来へ

いつもの便秘、たかが便秘と思わず、調子がおかしい時が続く場合にはには我慢せずに消化器内科を受診しましょう。

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